震災から1年を経て、2012年3月11日 名古屋にて第二回自立復興シンポジウム「光に向かって」を開催しました。
様々な立場の有識者の方から、被災復興活動の報告・問題点/課題提示があり、
参加者各人が日本人として明日から何をすべきか思いを巡らす意義深いシンポジウムでした。
若宮八幡社宮司による黙祷で厳かに開会し、各講演の間には、小学生の天使の歌声が響き、
岩手県藤源寺住職による般若心経読経、ラストにはセイエド・タヘルもコーランを披露し、
宗教・国境を越えて平和を祈念する一日となりました。
また、多くのボランティアのご支援を得て、ご参加いただいた皆様に、
被災地で提供しているのと同じパキスタンカレーとチャイやデザートを提供しました。
心もお腹も満たしていただけたと思います。
各講演のほんの一部ですが、さわりをご紹介させていただきます。
● オープニング
開会のご挨拶: 連帯東北代表理事 佐多保彦
東北で熱心に活動したタヘルの日本での活動拠点である愛知県名古屋市で自らがサタ(佐多)クロースとなり、
ご支援いただいた皆様への感謝の心をこめ、シンポジウムを開催いたしました。
黙祷: 若宮八幡社 宮司 副野均様
被災に際して天皇陛下のお言葉を紹介され、蝋燭の灯の中、黙祷を行う。
今年の歌会始の儀での陛下の歌
「津波来し時の岸辺は如何なりしと見下ろす海は青く静まる」
● 講演1: 株式会社マイヤ 社長 米谷春夫様(ビデオメッセージ)
この震災でお母様と先祖代々のご自宅を失われた米谷様は、
全国からの支援に対する深い感謝の念を述べられたうえで、
復興プランが立案され日々瓦礫が取り除かれてゆく中、被災者の間に募る不安について言及されています。
まだまだ厳しい状況が続くけれども、
ファイティングスピリッツで頑張っていくので、巨大津波被害を忘れないでくださいと訴えられました。
また、震災以来米谷様が直面してきた現実についても述べられています。
- 社員16名が命を落すに至った。
- 開業50年のスーパー6店舗が全壊して70億円の売上が失われ、350名の社員を一時解雇せざるを得なかった。
- しかし、7月までにほぼ全員の再雇用が実現できた。
● 講演2: あしなが育英会 理事 小河光治様
あしなが育英会は、国からの補助は受けず、その資金の全てが寄付で賄われている民間団体であることを紹介された上で、
その活動について報告されました。
紹介された震災遺児の保護者の声は、参加者の心に響いていました。
- 震災は新学期直前であったため、被災2日後には財源の目途も立たないまま、津波遺児への「特別一時金」支給を決定。
- その後48億円もの寄付をいただいたため、現在は1人当たり200万円を支給している。
- 1ヶ月後には「東北事務所」を開設。遺児の心のケアセンター「東北レインボーハウス」の建設が5カ所で進行中。
● 講演3: 名古屋第二赤十字病院 院長 石川清様
「被災地の医療の早い復興を願って-災害救護は赤十字の使命として支援-」と題して、
自院の活動・教訓について報告されました。
また、活動を通して明らかになった問題点についても提示されています。
- 発災80分後に災害対策本部を設置し、夕方には合同初動班が石巻へ向かう。
- 全病院一丸となり、8月末までに228名の職員を派遣。
- 宮城県の医療コーディネーター石井正氏中心に3600チームを統括し、被災者でもある石巻日赤職員の献身的な行動は医療従事者の模範であった。
- 石巻圏合同救護チームで集まった災害医療のエキスパートで災害医療ACT研究所を設立。
- 今後は心のケアが最も重要であり、医療支援の撤退時期は難しいが、支援活動が終了しても被災地の事は忘れてはならない。
● 講演4: 医療法人一色診療所 理事長 坂野哲哉様
被災地で活躍する災害医療チームJMAT(Japan Medical Association Team)による、
福島県いわき市内6カ所に設置された避難所での活動を報告されるとともに、
今後のJMAT活動について問題提起をされています。
JMATとは日本医師会の名の下に都道府県医師会が郡市区医師会を単位として編成し、
被災地で活躍する災害医療チームのことを言い、
その任務は亜急性期及び慢性期疾患の継続医療を被災地医師会と協力して行うものであると説明がありました。
(DMAT:超急性期の災害医療)
● 読経: 曹洞宗藤源寺(岩手県一関市) 住職 佐藤良規様
自身も被災され奇跡的に生き延びた佐藤住職が、鎮魂の想いを込めて般若心経を読経。
● 合唱: 椙山女学園大学附属小学校 2年生のみなさん
3曲披露していただきました。ラストの"We are the World"には、会場からアンコールもあり、
児童の皆さんが発信したメッセージは温かく、来場者に明るい未来の芽吹きを印象付けました。
「椙山女学園大学附属小学校 2年生のみなさんの合唱」をダウンロード
● 基調講演1: 医療法人社団KNI 理事長 北原茂実様
- 「病院が東北を救う日~この国を崩壊から救うために~」と題し、日本の医療と社会保障について問題提起。
- 日本が今や『崖っぷち』の状態となった原因や、医療崩壊から日本を救う手立てを提示。
- 国内外で展開されている経済産業省とタイアップしたまちおこし等の他、医療を起点とした『KNI』による多種多様な取り組みを紹介。
- 思考は必ず実現すると信じ、国民が問題意識を共有して明日からの行動を考える事が社会を変える力となると主張。
● 基調講演2: 埼玉学園大学 経営学部長 (連帯東北 理事) 奥山忠信様
「東北復興について~大震災、そしてもう一つの危機~」と題し、経済の側面から国政
に提言されました。概要は以下のようなものです。
- 被災地の方々の冷静で秩序正しい行動は称賛に値するが、一方で国側の歪んだ仕組み(学界・マスコミ・霞が関・政府)に対し疑問や苛立ち
を感じている。
- 現在の日本国債はデフォルトの危機にあり、日銀は早急の対策が必要である。
● パネルディスカッション
各講演講師に、㈱エバ会長江場康雄様・佐藤住職・さくら総合病院外科部長小林豊様にも加わっていただき、
今後の東北を中心とした日本の復興に対して話合われました。
江場様は、「この世には闇は無く、闇に見えるのは影であり、光と影は一体である」と傷みはじめた世界に自立ありきの支援を訴え掛けられました。
阪神淡路地震の折、救援のため自衛隊に先んじて神戸入りされた小林様は、
民間の「さくら総合病院」から派遣された救急車と看護師と共に宮城県庁に向かわれた際の経験についてお話しがありました。
災害対策本部に情報が集まらないため、状況把握に行政を頼ることができない中、
災害救助情報と勘を頼りに活動を続けられた小林様は、
阪神淡路での傷病者との違い、
ご遺体をご家族のもとへといち早く戻すための検案の重要性を認識されたと話されています。
また、
復興支援は継続が大事であることを強調され、
小林様が取り組まれている被災地で購入した物品を販売する支援について紹介されました。
● シンポジウムをとおして
連帯東北では炊き出し活動を通じ、被災された方々の心のケアを活動の中心として自立支援を行ってまいりました。
活動を通し、『利他主義』の重要性を認識するに至りました。
『利他主義』とは、礼儀正しく他人の幸せを自分の幸福のように願う心のことであり、全ての宗教も基本は『利他主義』なのです。
日本人が心情として広く共有するこの『利他主義』こそが日本を救います。
この美しい考え方を大切にすることが重要であると私たちは信じます。
今日、日本は政治・経済共に危機に瀕しています。
東北の自立は日本を救い、世界を救います。私達の活動も世界に目を向け、連帯東北から連帯東西南北へとパワーアップを図っていきます。